青年会議所は戦後の混沌とした時代背景の中、「新しい日本の再建は我々青年の仕事である」という覚悟のもと、「明るい豊かな社会の実現」を理想として設立されました。その後各地に運動が広まり、橿原青年会議所も本年50年目を迎えます。この理想は現実になったとも決して実現することはないとも言えます。先人の尽力により戦後の荒廃した町に住んでいた人々からすれば明るい豊かな社会である一方、今の時代に住む人々からすればまた別の理想があり、つまり明るい豊かな社会とは時代に即して移り変わっていくものであるからです。しかし半世紀たった今も創始の志は脈々と受け継がれ変わることはありません。我々が具体的に想像できる理想を目指して運動を展開していけば、現代の明るい豊かな社会を築き上げることは可能であると確信します。
【50周年を迎えて】
一般社団法人橿原青年会議所は50周年という節目の年を迎えます。50周年が不朽の功績であるのは間違いのない事実です。我々は50周年に立ち会えたことを誇りに思い、責任を持って運動を伝播する義務があります。諸先輩方が寝る間も惜しみ地域の為に活動してこられた積み重ねがあればこその50周年です。過去の運動を検証し今の時代背景に照らし合わせ、より時代に即した運動を展開していく契機であり、その活動の軌跡を広く世間にPRし、地域に認知され必要性を感じていただくチャンスでもあります。残念ながら地域で50年も運動を展開しているのに未だに青年会議所の認知度は低く、事業に参加していただいた方の中にも我々の運動をよく知らない人がいます。見てくれている人は見てくれているではいけないのです。青年会議所とは意識変革を促す団体です。人々の意識を変えるには影響力が必要ですし、運動を伝播していくためにも広報力は不可欠です。この運動は橿原青年会議所が行っているのだということを広くPRすることは、我々の今後の活動に大きく影響します。記念の年であるということを最大限活用して多種多様な媒体を用いた広報活動はもちろんのこと、メンバー一人ひとりが広告塔となって地域にPRし、橿原青年会議所のファンを獲得していきます。そして地域と一体となって運動を展開するため、残すべき伝統は残し時代に即して改革しながら次の世代へと繋いでいける節目の年とします。50年は数字の上では特別な年ですが我々が行う運動の目的は何も変わりません。我々が住み暮らすまちに今何が必要なのかを考え、理想を実現するために目的意識を持って課題解決に取り組みます。
【組織の力を高める】
我々の会員数は約70名で40周年時と比べると減少傾向にありますが、全国的な会員数の推移からみるとかなり健闘しています。また例会出席率に関しても高いレベルで推移しています。これは橿原青年会議所の強みであり、諸先輩方から受け継がれてきた伝統です。毎年卒業生がいる中、最低でも同じ数の拡大の成果を挙げないと当たり前に会員数が減少し、それは組織力の低下に直結します。しかしそれ以外にも組織力が低下する可能性はあります。強い組織であるためには全メンバーが同じ目的意識を持って活動する必要があります。現在の会員の構成をみると入会3年未満のメンバーが半数を占めており、その上現在の情勢では以前のように対面で十分なコミュニケーションをとることが難しい状況でありました。このような状況下だからこそ、今一度組織の結束力を強め、目的を確認し、志を同じくする必要があります。ただし若いメンバーが増えたことは新しい視点を手に入れるチャンスでもあります。目的を達成するための手法は一つではなく、様々なアプローチで目的に近づいていくことが大切です。それぞれのメンバーが自分らしさを出し積極的に関わり合うことによって、組織の発展に繋がり、より良い運動に繋がります。慣習にとらわれず自分の考えをきちんと相手にぶつけて下さい。時には意見が対立する事もあるでしょう。その対立が互いの成長に繋がります。過ごした時間の分、流した汗の分、語り合った言葉の分だけ結束が生まれ損得抜きで助け合える、そんな関係が生まれます。様々な考えを持ったメンバーが同じ目的に向かって運動を展開する。その運動に共感し自ら一緒に活動したいという入会者を迎え、また新たな考えを持ったメンバーとより質の高い運動を展開していく。そのような理想の循環を創出し、質・量ともに充実した橿原青年会議所を目指します。
【地域で子供を育てる】
「子は宝」という言葉があります。これは自分の子供だけを指す言葉ではありません。未来の地域を担っていく子供の教育というのは国家百年の計であり、橿原青年会議所としても積極的に取り組むべき課題であります。宝だから箱に入れて大切にする、これでは次代を担う人材は育ちません。たとえ躓いて転んだとしても時には遠くから見守り自分自身で起き上がる経験をさせる必要があります。成功であろうと失敗であろうと子供時代の経験は全てが財産となり生きる力を養い、そして人間はその経験を基に考え成長します。子供であろうと答えを用意するのではなく自ら考え行動する習慣を身に付けることによって、どんな困難も解決する力と物事の善し悪しの判断ができる道徳心を培い、次代を担う大人へと成長していくのです。我々大人は学校教育だけでは足りない部分を地域全体で補い、子供が健全に成長するよう導く必要があります。地域に育てられた子供は地域を愛し地域に残ります。生まれ育った地域を誇りに思う子供が立派な大人になったとき、その人材は地域にとっての宝となり、我々が目指す場所に一歩近づくと確信します。
【自分で考える】
社会には情報が氾濫しております。調べれば簡単に情報が手に入る現代、果たしてその情報は正しいのでしょうか。簡単に情報が手に入る今だからこそメディアリテラシーを高め、情報に振り回されない考える力が重要になってきます。間違った情報は自分だけでなく周りの人間も傷つける可能性があります。具体的な数値は根拠があり正しいように思いがちですがその数値はどのような取り方をしたのか、情報の発信者は誰か、手に入れた情報を自分の中で整理して考える必要があります。時代を変える人間、地域のリーダーたる人間は考える力に優れています。青年会議所においても目的や過程を考えることを怠り、例年そうしているからという理由で行った活動は良い結果を生みません。考えるという行為を習慣にし考える力を養うことによって、人工知能では代替できない力が身に付き地域社会を牽引する人材へと成長します。地域のリーダーたるそれぞれのメンバーが自分で考え行動し、明るい豊かな社会の実現に向けた運動を展開していきます。
【人が集まるまちづくり】
良いまちとはどんなまちでしょうか。安心安全なまち、子育てがしやすいまち、福祉が充実しているまち、経済活動が活発なまち、人によって理想は違いますが一言でいうと住みたいまちです。違う理想を持った人々皆が住みたいまちにする必要があります。現在の橿原市の財政状況は決して潤沢とはいえず、真に必要とされているもの、そうでないものが容赦なく取捨選択されていきます。このような状況下で橿原青年会議所がどのような活動を期待され求められているのか、様々な方面からの規制がかかる中何をすることが出来るのか、行政、企業、地域住民と相互に協力し合い、今一度良いまちを考える必要があります。地域課題を洗い出し、それぞれの立場での意見を集約し、求められるまちづくりを市民自身が考える機会を創出します。良いまちには人が集まります。子供たちが大きくなったときにこのまちに住み続けたいと思えるようなまちにしていきます。
【持続可能な経済活動】
企業が利潤を追求するのは当たり前です。しかしそこには健全な経済活動の上でという制約がつきます。企業も地域コミュニティの一員である以上、自分だけが儲かればいいという考え方では一時的に利益は上がっても持続可能な経営は不可能です。しかし我々がJC活動をするためには自身の経済基盤の確立は不可欠であり軽視できない点であります。では仕事とJC活動は相反する活動なのでしょうか。「情けは人の為ならず」という言葉があります。我々はこの地域で仕事をしている以上、地域経済の衰退は仕事の衰退に繋がり、地域経済が健全に発展することは結局自分の会社が発展することに繋がります。どちらも自分自身に返ってくるのです。我々はこの地域で活動する青年経済人として、公正かつ自由な経済活動を促進し地域経済の発展に寄与する運動を展開していきます。
【最後に】
今想像しうる理想を実現するためには何をすべきかを常に考え行動する、その積み重ねによって明るい豊かな社会へ近づいていきます。考えることをやめて惰性で事業を行うと橿原青年会議所は衰退していきます。慣習が必ずしも正しいとは限らず、常識は常に変化し、新たに生まれ続ける多様性の認容が求められる時代であります。その時々で最善を考え失敗を恐れずいいと思うことを思い切って実行して下さい。万が一失敗しても助けてくれる仲間がここにはいます。本当に求められる事業は何かを常に考え実行していく限り橿原青年会議所は存続し続け、次の10年、50年とさらに飛躍することでしょう。地域を良くする活動は地域に住む者の責任です。その活動は時間やお金を損しているわけではありません。情けは人の為ならず、その成果は巡り巡って我々の元に返ってくるのだから。
失敗する人には二種類ある。
考えたけれども実践しなかった人と、実践したけど考えなかった人だ。
ローレンス・ピーター